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世は幕末、江戸時代に栄華を誇った幕府は、薩長を中心とした反勢力らの台頭により存亡の窮地にあった。『尊王攘夷』を旗印に、勤王の志士と名乗る過激脱藩浪人達が洛中に集結。思想合い入れぬ者を無差別に暗殺する事件が横行する。 そこには暗殺プロフェッショナルが必要とされた。倒幕派の中にあり、勢力をのばして台頭してきたのが武市半平太率いる土佐勤王党。武市はまさにその「暗殺部門」のトップ頭脳であり、彼に盲信的に従ったのが岡田以蔵である。以蔵はひたすら暗殺をくり返し、最強の刺客と呼ばれた。一方では彼らに対抗するため幕府が投入した新撰組が、彼らを討つべく付け狙っていた。 やがて日本政治の根本批判、海外世界との融和を唱える時の人物、坂本龍馬の存在が大きくなる。龍馬は左派右派関係なく世界に目を向けた奔放な活動をしたため、幕府、また尊王攘夷の両組織からまで追われる身となっていた。彼はキリスト教の教えを理解し、宗教概念を超越し世界平和を訴えていた。 孤独な殺し屋、以蔵にとって龍馬は武市以外に唯一心を許せる古い親友だった。龍馬は人の心の救済としてキリストの教えを時に真剣に、時におもしろおかしく教える。龍馬の紹介で勝海舟とも出会い、いつしか以蔵は外敵の教え、キリストの言葉に熱心に耳を傾けるようになる。神の言葉は、武市の殺害命令とも、志士達の罵声とも違い、彼の心に深く染み入ってゆくのだった。 ひょんな事で、以蔵は新撰組の山南と飲み友達になってしまう。互いに正体を知らぬまま誼をふかめてゆく二人。さらに、あろうことか以蔵は上司武市の命に背き、龍馬や勝の警護を引き受ける。 思慮浅く、猪突猛進な以蔵は、知らぬ間にすべてを敵に回していたのだった。 ついに、尊王攘夷派と新撰組が衝突した「寺田屋事件」の夜がくる。 引き止める友を残し、以蔵は死闘の池田屋へと向かう。 「神様よ、悪いき。やっぱわしは…狂った野良犬ぜよ」 身分低き農民が憧憬した武士として振る舞い、自らの天命として人を斬り続けた岡田以蔵。反体制のカリスマとして以蔵を操り続けた武市半平太。また以蔵がライバル心を燃やした凄腕薩摩藩士:田中新兵衛。さらに荒ぶる新撰組。そして彼らを影ながら支えた名もなき京女達。「幕末」と言う巨大な渦中に生きた、一人の刺客の生き様と彼が盲信した狂気と純粋な信仰心。それを取り巻く壮絶な時代と人間ドラマを伊藤えん魔がファントマ流エンターテイメントにして世に送り出す痛快娯楽作。 |

