■物語

維新開国の時代の狭間、世は混沌としていた。

絢爛な文明開花を謳歌する浮き世に紛れ、
その若者、弥太郎は日陰で貧しく生きていた。
しかし、弥太郎には別の世界が見えていた。
それは「人の世に潜む妖魔の存在が見える能力」だった。
出会う者はおろか、旧知の者ですら妖魔はいた。

人の世に紛れこむ魔界を見る事は弥太郎を絶望させた。

ある時、
妖しの妖術を操る術者:幻心尼が現れる。
幻心尼は「人としての何か」を渡せば、
その力を封印できると持ちかける。
代価は肉体の指先、腕、足、または声、耳、眼…。

自棄になっていた弥太郎は言われるまま「言葉」を渡す。
その瞬間から、見えていた魔の世界は一旦その光景を消す。
だが、言葉を失った弥太郎は、うまく話せなくなり、
それが原因で奉公先を追い出され、路頭にまよう。

時を同じくして、世は幕府側と倒幕派が血で血を争っていた。
また、得体のしれない妖魔らが京に出没し災いをまき散らす有様。
京都の治安を守る新撰組だったが、
副長:土方歳三らもあまりに混乱する都の警備に翻弄される。
偶然、斬り合に巻き込まれる弥太郎。
しかしなんと、斬られて死んだはずの侍が再び生き返る。
「死人返り」となったもののけから弥太郎を助けたのは茨木半兵衛。
巷で「その正体は鬼」と噂されるあやしの侍だった…。

はたして回りは人か魔か? 誰が敵なのか味方なのか? 
動乱、戦の時代。
そしてついに、人と妖魔の壮絶な闘いがはじまる…。
























イラスト/近藤ゆたか絵師